Zoom Ikebana Dojo

新保逍滄 





生け花には大きな可能性があります。


現在、日本では生け花人口は減少傾向にあるようです。しかし、生け花の癒し効果、瞑想効果、モダニズムの自然観に拮抗し得る自然観、環境倫理に変更をもたらし得る環境芸術としての可能性など、海外で再認識の動きが、少しづつではありますが、起こっていることを、オーストラリアで生け花を指導している私たちは感じています。そのような期待とニーズにどのように応えたらいいのか。旧弊にとらわれることなく、新しい形で、もっと自由に、もっと多くの人たちに生け花に触れていただけないか。そうした願いが私たちの活動の原点にあります。


華道師範としての私の当面の課題は、どうしたら自分の生徒にもっと力をつけてもらえるか、そしてどうしたら新しいニーズにも対応してもらえるか、ということです。そうした思いから生け花ギャラリー賞の創設、和メルボルン生け花フェスティバルの開催のお手伝いをしてきました。さらにこの度、Zoom Ikebana Dojoも始めてみようということになりました。


Zoom Ikebana Dojoの当初の目標は、師範を取得した私の生徒たちに指導練習の機会を提供することでした。たとえ作品力があっても、指導力がなければ生徒はついてきてくれません。師範をとっても即指導力がつくわけではありません。経験ある教師とチームを組んで教えることで指導力をつけてもらえるのではないかと思うのです。要は共同授業とオンライン指導を組み合わせようという試みです。


もしかすると日本の華道師範の方々の中には、なぜ一介の華道師範の私がそこまでやる必要があるのかと思われる方もあるかもしれません。それは、海外では華道師範という仕事がなかなか成り立たないからです。華道は習得に長い時間がかかります。仕事にしない限りその奥深いところまで達することはかなり難しいように思います。しかし、海外では生け花から何らかの報酬を得るということは容易ではありません。看板だけで生徒が集まるということはないのです。授業料も日本と比べて非常に安い。生け花の知名度自体が低い。自分の生徒に華道師範として自立してもらおうと思ったら、作品力、指導力、さらに、活動歴、受賞歴など様々な面で自立を助けていかないといけないだろうと思います。その上、生け花の認知度を上げ、地域における生け花需要まで拡大できれば申し分ないでしょう。それは大変な仕事になります。私一人でできることではないですから、私の生徒を中心に優れたチームが育ってくれることを願っています。


Zoom Ikebana Dojoにはもう一つの目標があります。実は、やがて日本をはじめ世界各国の実力のある花道師範の方々にもゲストとして指導役を担当していただけないだろうか、と思案しています。海外在住の生け花学習者の中には、住んでいる場所の制約から質の高い生け花のレッスンが受けられないという方が少なくありません。しかし、インターネットを使えば、一つの解決策を提供できます。経済的な事情で著名師範の授業に出る余裕がない、あるいは学ぶ機会がないから生け花を止めてしまおうかというような方々にとっては、少なからずお役に立てるのではないでしょうか。


さて、こうした思いからZoom Ikebana Dojoを立ち上げてみると、まだ成長途中ではありますが、なかなか特徴のあるプロジェクトになってきたように思います。まず、最大の特徴は実践を重視したプロジェクトであるということ。インターネットを使っての生け花指導は色々模索されていますが、ここまで能動的に関わらざるをえないというのは少ないのではないでしょうか。生け花の上達に欠かせないのは、実際に花に触れ、悩み、楽しんで活けることです。単に鑑賞するだけでは十分ではないと私は思います。


次に、現在、海外で行われている生け花指導の補習的な役割が果たせないかとも考えています。外国人への生け花指導は一般に日本人相手の場合より難しいのではないでしょうか?外国で生け花がなかなか浸透していかない現実を見つめることが必要でしょう。多くの場合、生け花の指導は伝統的な守破離という指導理論に基づいているようです。外国人向けにはこれを若干柔軟に補正していく必要があるかもしれません。


さらに、日本の方々に参加していただくことで、世界各国の生徒と日本の華道家や生徒とが生け花について語り合える場が作れるかもしれません。ありがたいことに私の生徒たちは明るいフレンドリーな方々が多いのです。すると、日本の方々にとっては楽しい雰囲気の中で生け花とともに英会話練習の機会にもしていただけるでしょう。特に将来英語で生け花を教えたいという方々には意義のある学びの機会となることでしょう。さらに、世界各地に散在する生け花学習者をゆるい形で結びつけられるかもしれません。


また、2019年度から開始した和メルボルン生け花フェスティバルへの出展者募集の広報にもなるでしょうか。このフェスティバルは世界中から出展者を募集するという開放的な華道展です。かなり特徴的な方針のフェスティバルになっていると思います。Zoom Ikebana Dojoで知り合った楽しい方と同じ展覧会に出展できるというのはとても特別なことになるはずです。


少なくとも、最終的にはインターネットを利用して一層の生け花の普及を計ることにはなるだろうと信じています。


つきましては、多くの日本の方々にお気軽に参加していただけますようお願い申し上げます。また、華道師範の方々には、「指導者役をお願いできませんか」というメールを突然差し上げるということもあろうかと存じます。できるだけのサポートはさせていただく所存ですので、ご検討いただければ幸いです。貴方のご協力は、私たちにとって、また世界各地の生け花学習者にとってとても大きな意味を持つことになるでしょう。もしよければ、まず1回試してみませんか?


補足:「千日挿花行」(3年で1000作)について